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地価LOOKレポート令和4年(2022)第1四半期分が公表 対象地区20カ所が削減に

朝倉 継道朝倉 継道

2022/06/10

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地価LOOKレポート 令和4年第1四半期分

対象地区の減った地価LOOKレポートが公表

この6月7日、国土交通省から「地価LOOKレポート(主要都市の高度利用地地価動向報告)令和4年第1四半期分(2022年1月1日~4月1日)」が公表されている。まずは今回、大きなトピックが生じた。それは調査対象地区の削減だ。前回までの100地区から80地区へと数が減っている。

ちなみに「100地区」時代は平成27年(2015)第1四半期より前期まで7年間続いていた(途中1期のみ99地区で公表)。それ以前には、さらに多い150地区時代もあった。このことについては、またのちほど触れることとしよう。

変化が小さい四半期

国交省は今回「変化が小さい四半期」と、レポートをまとめている。「80地区における地価動向は、75地区で変動率区分が前期と同様」とのことだ。そこで、いわゆるコロナ禍の期間を絡めたかたちで、以下、対象全地区分での推移を見ていくことにする。述べた通り、今回調査地区の減少があったため、地区数ではなくパーセンテージで各期を比較していきたい。

——コロナ禍前——
19年第3四半期 上昇地区97% 横ばい地区3% 下落地区0%
19年第4四半期 上昇地区97% 横ばい地区3% 下落地区0%

——コロナ禍発生時(国内初の感染者をこの期に確認)——
20年第1四半期 上昇地区73% 横ばい地区23% 下落地区4%

——コロナ禍下——
20年第2四半期 上昇地区1% 横ばい地区61% 下落地区38%
20年第3四半期 上昇地区1% 横ばい地区54% 下落地区45%
20年第4四半期 上昇地区15% 横ばい地区47% 下落地区38%
21年第1四半期 上昇地区28% 横ばい地区45% 下落地区27%
21年第2四半期 上昇地区35% 横ばい地区36% 下落地区29%
21年第3四半期 上昇地区40% 横ばい地区30% 下落地区30%
21年第4四半期 上昇地区55% 横ばい地区28% 下落地区17%

——今回——
22年第1四半期 上昇地区57.6% 横ばい地区26.3% 下落地区16.3%
(小数点以下での繰り上げの影響により合計100%超となる)

見てのとおり、コロナ禍発生によって一時は1%にまで落ち込んだ上昇地区の割合が、その後、大幅に増加し続けてきたところ(前回55%)、今回はひと休みしたかたちとなっている。また、それに合わせ、前回いっときの足踏みから大きく減少へ舵を切った(30→17%)下落地区の割合も、今回はやはりひと休みした格好だ。 

コロナ・ショックからの回復傾向が続いてきた日本の「主要都市の高度利用地地価」が、いま動きを一服させ、今後の様子見に入ったところのようにも見えるが、そのあたりの判断は次回レポート以降に固まってくることとなるだろう。

マンションが引っ張る住宅系地区の好調

以上、全体を見ての「一服」感のなかで、住宅系地区に限れば地価の上昇傾向は鈍りながらも堅実といっていい。今回は上昇地区が95.6%と、前回の93.8%に対しては微増ともいえるプラスに留まっているが、コロナ禍発生時(20年第1四半期)以来となる「3%以上6%未満」の高い上昇率を示す地区が1地区現れている。

場所は、福岡市中央区の大濠地区だ。地価LOOKレポートがまとめている“地区の特徴”によると、「福岡市営地下鉄空港線の唐人町駅(天神駅まで約6分)からの徒歩圏。大規模一般住宅の中にマンションが混在する地区」となっている。九州最大の繁華街・天神に近接し、なおかつ新幹線ターミナルも空港も東京的感覚からいえば「まるで玄関先」といえる、生活至便の住宅地だ。不動産鑑定士によるコメントも見てみよう。

「福岡市内でも有数な優良マンション供給エリアに位置付けられる当地区では、取引価格の上昇傾向はさらに強まっており、当期の地価動向は上昇で推移——」

このように、要は都心部を調査の対象とする地価LOOKレポートでは、住宅系地区の地価動向は、マンション用地の需要にひっぱられる傾向が必然的につよいかたちとなる。

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削減20地区について

さて、次は冒頭にふれた今回からの削減20地区についての話となる。顔ぶれはこうなっている。

住宅系地区
東京都 品川、豊洲、有明、立川
神奈川県 新百合ヶ丘
愛知県 覚王山
京都府 桂
兵庫県 六甲
奈良県 奈良登美ヶ丘

商業系地区
岩手県 盛岡駅周辺
東京都 日本橋、赤坂
神奈川県 元町
富山県 富山駅周辺
岐阜県 岐阜駅北口
大阪府 中之島西、OBP、江坂
愛媛県 一番町
鹿児島県 鹿児島中央駅

確かにこれらのなかには、近隣の他の地区の動向を見ればおおむね分析に足ることで、わざわざ調査対象に入れておく必要がなさそうな地区もあるが、逆にまったくそうでない地区もある。例えば、「岩手県 盛岡駅周辺」「愛媛県 一番町」「鹿児島県 鹿児島中央駅」だ。これらについては、それぞれが調査対象から抜けることで…

「東北北部3県エリア」
「四国西部・南部2県エリア」
「九州東部・南部2県エリア」

こうしたかなり広範囲のエリアにおける中心都市が、地価LOOKレポートのウォッチング対象から外れることになる。加えて「富山県 富山駅周辺」も、それに近い傾向をもつものといえるだろう。 

つまり、岩手や愛媛、鹿児島、富山各県の人に対してはやや無神経な表現になるが、現在これらの地区は、大都市・拠点都市として国がわざわざ地価動向を注視し、分析・発表するほどの場所ではなくなったということにもなるわけだ。

なお、今回の国交省のリリースには、調査対象を削減した理由は書かれていない。しかしながら、上記削減に対しおそらく多くが違和感をもたないであろう辺りに、いわゆる3大都市圏や地方4市(札幌・仙台・広島・福岡)へのさまざまな集中が進む、現下のわが国の状況が示されているともいえそうだ。

地価LOOKレポートとは?

最後になったが、地価LOOKレポートとは何か? について添えておこう。

国交省が四半期ごとに公表する「地価LOOKレポート」は、公示地価・路線価・基準地価のいわゆる3大公的地価調査に次ぐ第4の指標として、他の3者にはない頻繁な更新をもって、われわれに日本の土地の価値にかかわる方向性を指し示してくれるものだ。

特徴としては、地価の動向を表す9種類の矢印や、多用される表や地図により内容がとても把握しやすい点が挙げられる。ただし、3大公的地価調査とは異なり、土地の価格そのものが示されるわけではない。地価のトレンドを調査し、分析する内容の報告書となっている。

全国80(今回より)の調査対象地区すべてにつき、不動産鑑定士による具体的なコメントも添えられている。それぞれのエリアの実情を理解するうえでよい助けとなるだろう。

留意すべき点として、今回記事でも触れているとおり、地価LOOKレポートは全国の主な都市部の地価にのみ対象を絞っている。正式名称「主要都市の高度利用地地価動向報告」が示すとおりとなる。

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この記事を書いた人

コミュニティみらい研究所 代表

小樽商業高校卒。国土交通省(旧運輸省)を経て、株式会社リクルート住宅情報事業部(現SUUMO)へ。在社中より執筆活動を開始。独立後、リクルート住宅総合研究所客員研究員など。2017年まで自ら宅建業も経営。戦前築のアパートの住み込み管理人の息子として育った。「賃貸住宅に暮らす人の幸せを増やすことは、国全体の幸福につながる」と信じている。令和改元を期に、憧れの街だった埼玉県川越市に転居。

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